青山岳史さん(㈲日康金属製作所)
青山さんは、日康金属製作所という小さな町工場を営んでいる。常務取締役として、父と兄と三人でさまざまな発注を受け、板金製作している。板金を曲げ、組み立て、通信機器や電源筐体を作るのが主な仕事だ。
それだけでなく、子どもが通う小中学校のPTA活動や町内会活動などにも楽しみながら主体的に参加している。
つながりが互いの仕事を生む
青山さんは、働くうえで、少しの時間も無駄にせず、緊張感をもって仕事に臨んでいる。また、小さな部品一つひとつに責任を持ち、こだわって製作している。「ただ形を作って終わりではなく、相手からどうみられるか」を考え、「日康金属の製品」として外に出しても恥ずかしくないような部品づくりを心がけている。それだけでなく、発注先の納期期限を守るため、日頃から効率よく作業している。設備的に難しい作業は、「工業会」の仲間と協力して製品をつくっている。
工業会は、同業種の若手経営者の集まりだ。経営が落ち込んでいるとき、青山さんは自らが使用している機械の製造メーカーが主催する異業種交流会に参加した。それがきっかけで、似た境遇にある工場の2代目3代目とのかかわりが深くなった。そのメンバーが集まり「工業会」が生まれた。工業会をつくることで、自分の工場では設備的に難しい仕事も他の工場と協力して行えるようになった。メンバーの親睦が深まったことで、工場同士の連携が取りやすくなり、より多くの仕事を受け入れられることにもつながった。
自分の工場だけではなく周りの工場も忙しくなるー。これは青山さん自身が大切にしている想いだ。自分は工業会というチームの一員だから、自分だけが忙しくなるのではなく、同じ業界の仲間と協力しながら、ともに発展していくことを望んでいる。そうすることで、さまざまな発注に対応できるようになる。この想いを仲間と共有しようと青山さんは努めている。
自分の思いを素直に話せる仲間づくりを
青山さんは、仕事の他にもさまざまな地域活動に参加している。学生の頃に入っていた少年野球がその始まりだ。今では、工業会、母校のPTA、町内会での活動、ソフトボールチームの監督、草野球チームで活動している。誰かのために自分の時間を犠牲にするのではなく、自分が楽しむというスタンスで積極的に参加している。また、人々とのつながりも大切にしている。参加する活動それぞれで、年齢も職業もさまざまな人とのかかわりができる。中には20年来の付き合いの人もいるという。自らを「オープンな性格」と語る青山さんは、人とかかわる際になんでも包み隠さず話すことを心がけている。そんな青山さんをみて、真剣に向き合ってくれていると感じ、相談を持ちかける人も少なくない。相談し合えるほどの深いかかわりを築けているのは、青山さんがさまざまな活動に参加し、チャレンジし続けているからだ。
青山さんは学生時代に多くの人とかかわり、今でもその関係は続いているという。学生の私たちにも、多くの人とのつながりを持ち、色々なことにチャレンジしてほしいとアドバイスを送る。スマートフォンばかり眺めるような、リアルなコミュニケーションのない生活を送るのではなく、多くのことに目をむけ、ふだん見過ごしてしまうようなチャンスを逃さないように心がけてほしい、そう青山さんは語る。多く人とつながり、そのなかで自分の思いや考えを素直に話せる仲間を一人でも多くつくることが、青山さんにとっての理想でもある。
編集後記
人との心のつながりを大切にする青山さんの生き方に触れ、今まで得られたつながりを大事にしていきたいと感じた。今後得られるつながりや、今まで気づかなかったつながりも大切にしながら、青山さんのように自信を持った社会人になっていきたい。
インタビュー:奥田遥、田崎成美、田中雄大、田中萌恵子、根來潤之介、宮田充浩、渡邊清彦