四元弘樹さん(日本放送協会営業局)
四元さんは、日本放送協会(以下「NHK」)で営業を担当している。受信料を公平に負担していただけるよう、事業所への対応や毎月の業績管理などを行っている。
生活インフラにかかわる仕事がしたい
四元さんは、学生のころから「人々の生活により密着した、生活に関するインフラにかかわる仕事がしたい」と思ってきた。そう思うようになったのは、大学時代の放浪の旅がきっかけだった。四元さんは大学時代、西ヨーロッパやアジアなど十か国以上をひとり放浪した。その頃の日本はちょうどバブルが崩壊し、経済的にも停滞していた。「海外には何かあるだろう」…旅するきっかけは漠然とした思いだった。
しかし、なんとなく旅した国々は、道路が整備されていなかったり、水が供給されていなかったり、人々が安定して生活するための基盤が不十分で、決して物質的に豊かだとはいえなかった。大雨が降っても道路に水が溢れない、なんでも揃う日本の生活と異なる世界を目の当たりにし、もっとすべきこと、できることはあるのだなと感じた。また、日本にはない各国のまちの活気を肌で感じ、自分は技術を持っていないけれど、ものづくりに関与するなど人々の生活がよりよくなる仕事につくことはできると感じた。そうして四元さんは、人々の生活に密着する生活インフラの整備に興味関心がわいたのだった。
そのような思いから、就職活動では商社や銀行など、さまざまな企業を受けた。生活に関するインフラを整備する仕事というと、すべてがそれに当てはまるのではないか、そう思うかもしれない。事実、面接官からもそう指摘されたこともあった。しかし四元さんには、より人々の生活に影響を与えるようなことに携わりたいという思いがあった。そうして衣食住という人間の根幹にかかわり、全国で大規模な事業を展開している都市インフラを整備する企業に就職した。
あるものとあるものをつなげる~適性を知る
四元さんは、今の仕事を通じて、NHKの公共放送としての位置づけを、より広く、より多くの方々に知っていただけたらと考えている。そのような使命は、昔から変わらない生活インフラの整備に関わりたいとの思いからきている。人々の生活に直接的に影響を与える仕事をしたいと考えてきた四元さんは、なぜ番組制作ではなく営業という仕事を選んだのか。「それは自分の適性もあると思うんです。ゼロから何かを生み出す企画の仕事は、たぶん自分には向かないし、できないと思う」。人と人、企業と企業などをつなぐことにはなんとなく自信があったそうだ。小さい頃からやってきた野球では、なぜかずっとキャプテンを任されてきた。それは異なる意見を持つ人たちをひとつにまとめる礎となった。前職で自社と行政の間にたち意見を調整してきた経験も、さらなる自信へとつながった。
四元さんは、「三方よし」の考え方が、会社の発展へとつながっていけばと考えている。たとえば、前の部署では、番組制作部署と連携し、企画の立ち上げにも協力した。番組制作スタッフと連携し、よりよい番組をつくり、満足していただくこと、NHKの意義をご理解いただくことが、賛同者を増やすきっかけとなり、受信料をお支払いいただく可能性にもつながる、四元さんはそう考えている。
異なる意見を調整していくことは簡単なことではない。状況によっては敢えて調整せず、個々に任せることもある。四元さんは、「悲観的に物事をとらえ、楽観的に行動する」ことが大切だと考えている。この言葉は、かつて野球部の監督から教えられた。どのような状況にも対応できるよう、準備は徹底的に、そうでありながらも楽観的かつ前向きに行動する。そして「私は、困ったら笑うんです。それでいいと考えている。もちろん状況に応じてです。場を和ませることは大切。笑うことで怒る人はいないでしょ」。
編集後記
自分がると決めたことをやりきるという行動力、仕事に対する責任感の強さ、仕事に対する姿勢を四元さんからお話を伺いながら感じた。また、一人で仕事をするのではなく、自分の適性を生かしながら全体的に見ることによって、人とのつながりが大事だということを学んだ。
(インタビュー:伊藤絢香、植田凜、内藤美月、樋口翔平、藤本紗貴、三井崇弘)