広瀬新朗さん(株式会社ゲートウェイ)
広瀬さんは2012年に株式会社ゲートウェイを設立し、主にシェアオフィスの企画・運営管理を行っている。
シェアオフィスとは、複数の利用者が同じスペースを共有するオフィスである。打ち合わせやセミナー等の多様な目的、ノマドワーカーや起業家等の多様なワークスタイルに対応しており、自分でオフィスを持たなくても仕事ができる場所である。だが、同社の事業は、たんに不動産的な「箱ものビジネス」を行うのではなく“人のつながり”や“人の存在がある場づくり”に重きをおいている。同社では、そうした場であるシェアオフィスをNAGAYA(長屋)と表現している。長屋とは、江戸時代の集合住宅であり、複数の世帯が一つの建物に住んでいた。ここでは、現代にあっても世代や職種を超えた繋がりが持たれている。
思いに素直な行動力
広瀬さんは、以前会社勤めをしていた。その仕事が現在につながる不動産関連のものであったという。勤め始めてから半年後、若い間にできるだけ遠くに行っておきたい、いろんなことを経験しておきたいという思いを持っていた広瀬さんのところに、大きなチャンスが訪れた。“海外要員募集”だ。すぐに手を挙げ、希望した。「実は、パスポートも持ってなくて、言葉も話せなかった」が、気持ちと勢いだけで行動していたという。海外で目の当たりにした壁をつくらない人間関係が、“人とのつながりを大切にする”という広瀬さんの考え方の礎となっている。
その後、広瀬さんは、出来上がったものを売る、貸すのは自分の性格に合わないと感じるようになり、「モノ作りがしたい」という思いから独立し、現在に至っている。
人と人を繋ぐNAGAYA
広瀬さんの1日は、掃除から始まる。掃除は大切な社長業務の一つであると広瀬さんはいう。人任せにしてしまえば簡単なことであるが、自分自身が率先して行い、いつも現場に立つことによって人とのつながり、コミュニケーションの大切さを示している。
また、NAGAYA 利用者にとって居心地の良い環境づくりにも力を入れており、利用者をお客様扱いせず、同じ会社の同僚のように接する。「いらっしゃいませ」と声をかけるのではなく、「おはようございます」が当たり前の日常がNAGAYAにはある。
NAGAYAとは、縦と横のつながりがある空間である。つまり、多世代・多業種の交流だ。このNAGAYAの空間では、一人一人がフラットな関係でありながらも、年齢も業種も関係なく、利用者同士が交流を図れる。一人で起業する人は、自宅でスタートして段々と自分の殻に閉じこもり社会との関係が薄れていってしまいがちだが、NAGAYAを利用してもらうことで、悩みや不安を一人で抱え込まずに済む。
また、「食は時代を問わず人をつなげるきっかけ、ツール」との考えから広瀬さんは、NAGAYAの中にキッチンを作った。NAGAYAの中では、欠かせない空間となっている。こうした環境づくりからも、人と人のつながりをとても大切にしていることがうかがえる。
働き方=生き方
現在、株式会社ゲートウェイには正社員はおらず、8名ほどのスタッフをアルバイトとして雇用している。アルバイトという雇用形態をしている理由には、まだ会社の設立が間もなく制度にまできちんと手が及んでいないということもあるが、人によって異なる様々な働き方を尊重しているのと、そうした働き方に柔軟に対応するためでもある。スタッフの全員が女性であるために、家庭と両立を図ることができる職場づくりに努めている。世の中には、働きたいという希望をもつ優秀な人たちがたくさんいるにもかかわらず、フルタイムでは家庭と両立することが難しいという理由で諦めてしまうのはもったいないと、広瀬さんはいう。だからこそ、自分のライフスタイルに合った働き方を希望している人たちを積極的に採用している。
企業名や雇用形態にとらわれず、自分にとって何が幸せかということを考え選択する。その働き方が、最後は生き方に繋がっていくと話してくれた広瀬さんは、“働き方=生き方”であることを自らの取り組みで示し、発信している。
編集後記
目標に向かって突き進んでいる、キラキラした広瀬社長の姿を見ていると、目の前のことしか考えずに、心配や不安ばかり抱いている私たちが小さく感じました。「長いスパンで、先のことを見通して!」という広瀬社長からのアドバイスを元に、これから動き出して行こうと思います。そして、このインタビューを通して「働くって楽しそう!面白そう!」と感じ取れたことが、なにより良かったのではないかと思います。
(2014/8/25 菅谷・田中・新井)