Brimmer Brewing株式会社
代表取締役社長 小黒佳子さん
<プロフィール>
川崎市出身。2011 年4 月に川崎市に工場を設立し、2012 年3 月より本格的にビールの製造、販売を開始。家族経営のビール工場で、夫のスコット氏の長年の米国でのビール作り経験を活かし創業。「かわさき起業家オーディション(第78 回)」でかわさき起業家優秀賞、日本起業家協会賞、かわしん賞、はまぎん賞、川崎商工会議所会頭賞を受賞。
******************
平成27年11月11日(水)に開催された「かわさき女性起業家フォーラム」のパネルディスカッション時に、川崎市内で活躍中の女性起業家として、Brimmer Brewing株式会社代表取締役社長の小黒佳子さんに登壇いただき、創業の経緯や課題解決法など体験談をふまえて語っていただきました。
起業の経緯、事業内容
高津区久地で地ビールの製造販売をしています。最近は地ビールというよりクラフトビールという名でメディアなどには取り上げられてきていますね。2011年に会社を設立し、製造免許の取得等の諸手続きの関係で、実際に製造を始めたのは2012年の春になりますので、それから3年半ほど経ちます。設立したのは私と夫、その他従業員2名の計4名で製造販売、営業等を行っています。
起業の経緯は、私自身は短大卒後アメリカへ4年ほど留学し、帰国後に3年ほど日本の会社で働いていました。夫とはアメリカで知り合いましたが、帰国後に再会して結婚し、その後4年くらいアメリカで過ごしました。夫は学生の頃からカリフォルニア州にあるシエラネバダという大きなビール会社でアルバイトをしていました。工場に併設されているレストランの皿洗いやバーテンダー、工場見学のツアーガイドなどを経験し、結婚した時はステップアップしてビール職人になっていました。2006年に一緒にアメリカから日本に戻ってからは、静岡の御殿場高原ビールで5年間ビール製造に携わっていました。その間、彼は職人なので自分の思い描くビールを作りたい気持ちが強くなり、「独立したい」とずっと言っていました。しかし工場を建てなければビールを製造できませんし、金銭的にも難しく、ビジネスのノウハウもわからない状態で独立なんて出来るわけがない、と夫には断り続けていました。ですが、夫の熱意に巻き込まれたのか(笑)、開業するに至ったわけです。ただ、私も負けず嫌いなところがあるので、やるからにはしっかりやろうと、夫は製造、私はその他のサポートをしています。本来は二人で代表者としてやりたいところですが、夫は日本語が話せず、日本でビジネスをするには日本語が話せる方が良いので、私が代表取締役として取り仕切っている状態です。
地元起業の理由の1つは、家族の大きなサポート
地元川崎で独立を決意した理由として、私自身の地元ということで土地勘もあり、ネットワークや都市にも近いという条件でもベストな選択だったのですが、もうひとつ、息子が幼稚園の年少に入る時期だったいうのがあります。自営業だと保育園入園も難しいと知っていたので最初から幼稚園を選択しました。その息子はもう小学生になりましたが、同居している母が協力的で、息子の帰宅時は家にいて、習い事にも連れて行ってくれます。そして私たちが帰るとご飯も用意してくれている・・・という大変ありがたい状況です。私たちは全面的に甘えてしまっていますが、誰かに頼り、協力してもらうことは決して悪いことではないと思います。
また、私たちは週末も仕事のため、週末は息子を職場に連れてきています。子どもは親と一緒にいるだけで嬉しいものだとも思いますが、職場では息子もゲームやYou Tubeを観るという時間を過ごしているので、自分たちが休みをとってどこかに連れて行ってあげられないことを申し訳なく思います。息子に「どこにも連れて行ってあげられなくてごめんね」と言うと「大丈夫だよ、気にしなくて良いよ」と気を遣って言ってくれますね。
活用した創業支援メニュー~資金調達・事業計画作成・オーディション・相談~
工場ということでビールを製造する機械を購入する必要がありました。かなり大きな機械で、新品で買うとほぼ輸入で本格的なものは億単位になるのですが、それは無理なので、私たちは中古にしました。タイミングよく、あるブローカーさんが、採算が合わずに辞めたビール会社から買い取った機械を私たちに紹介してくれました。機械だけで1500万円、その他敷金や機械設置のための配管等、トータルで4000万円程度必要でした。
そこで、川崎信用金庫の高津支店へ、限度額が2500万円だった創業資金融資の申し込みをし、無事融資してもらえました。2500万円を融資してもらい、残りの1500万円は自己資金となるのですが、家族に借りました。ただ、川崎信用金庫さんより、中小企業診断士と面接をして事業計画書を作成するように言われました。書く度に何度も駄目出しをされ、書き直しをしたわけですが、今思い返すと、あの時点で自分が見えなかったことを専門家に厳しく指摘され、事業計画をブラッシュアップできたことは大変勉強になりました。
また、商工会議所を介しての税理士相談も活用しました。信用でき、いつも的確なアドバイスをいただけるのでありがたく、現在でも何かあればその税理士に相談しています。
あとは起業してすぐに川崎起業家オーディションに応募し、優秀賞等5種類くらいの賞をいただきました。市が主催の事業だったので露出も大きく、起業初期の段階で自分の力だけでは多数の目に触れる機会を得ることは難しかったので、大きなメリットになりました。ただ、川崎市内でもまだ弊社を知らない方はたくさんいるので、今後はもっと会社の認知度を上げたいと思っています。
継続のポイント、今後の展開
最初に設置したタンクでは1年未満でビール製造が間に合わなくなり、増設もしました。現在は、もっと生産量を上げたいけれどこれ以上は作れないという状況まで来ています。その理由としては、大手がコンビニで販売するほどクラフトビールがかなり注目され人気ということもあります。事業継続のポイントとして「伸びている市場を選ぶ」というものがありますが、夫はずっとそれを言っていましたし実践していました。今後は、拡張も考えていますが現在の規模だと難しく、費用の面もありますので悩んでいるところですね。
経営者となってからは、雇用される側ではわからなかった、雇用することの大変さも知りましたし、ネットワークを意識し、名刺交換や挨拶を心がけています。
これから起業しようとする皆さんに、今まで経験してきた中で私が言えることは、わからないことがあればとにかく専門機関などに聞くこと、そして困ったときは周囲に助けを求めることです。同じ起業家として一緒にがんばりましょう。