川崎市東日本大震災避難者支援総合相談窓口
中村佳代(なかむらかよ)さん
(写真右が中村さん。中央が同スタッフの植草邦男さん、左が丸山ゆかりさん)
誰かに話すことも女性にとっては特効薬
「避難者の方は、慣れない土地での生活を強いられており、生活環境の違いや周りに知り合いがいない孤独感などからストレスを抱えています。実際、私自身の被災体験を話すと被災者同士という共感からかご自身の被災の状況などを話してくれます。つらかった当時を思い出し涙を流す方もいました。話すことで気持ちが少し楽になった、同郷のもの同士が知り合える交流の場がほしいといった声がよく聞かれました。特に女性は人との交流を求めているように感じます。そのため、すくらむ21にて毎月開催される女性のための「ほっとサロン」への参加を呼びかけています。」
―具体的な生活の支援だけでなく、同じ被災者だからこそできる心の支援も中村さんは行っている。
被災経験者だから言える日頃の備え
「震災当日は実家のいわき市にいました。水が止まったため、飲み水の確保やトイレの使用に困りました。この経験から、風呂の残り湯を生活用水のために残しておいたり、ペットボトルなどに飲み水を確保しておくことを実践しています。当時は水を求めて、給水車に長い列をなす光景が各地で見られました。」
―普段なにげなく使っている水は私たちにとって大変重要なものであり、だからこそ日頃からの備えが大切であることを語ってくれた。
「女性の要望で多かったのは、自分自身に関することではなく家族、特に高齢の親や子どもについてのことでした。私も当時は子ども用紙オムツが手に入らず困りました。高齢者や子どもの食べものなど、それぞれの家族に合った防災備蓄も必要ではないでしょうか。女性ならではの備えとしては、個人的に必要と思われるもの(サニタリー用品、保湿クリームなど)を用意し、特に冬場は使い捨てカイロやマスクなどがあると良いと思います。また、避難所で生活された方からは、女性専用の洗濯物を干す場所や着替え、授乳をする場所などのプライバシーを守れるスペースが欲しかったとの声もありました。」
―と、日頃から行うと良い備え、女性の(隠れた)ニーズについて語ってくれた。
多様化する個人のニーズに対応していくことが課題
「昨年の7月31日にとどろきアリーナの避難所が閉鎖され、8月1日に市内に居住する避難者を継続的に支援するために当窓口が開設されました。開設当初は主に住居に関する相談や支援物資の提供などの生活面での問合わせが多くありました。
震災から1年半が経ち、避難者の生活や考え方も変化しています。画一的な支援から避難者個々に焦点をあてた支援が求められています。避難者の立場にどれだけ寄り添い、想いに応えきることができるかが今後の課題だと思います。また震災を風化させずに、原発被害を含めていまだに日常の生活を取り戻すことができない避難者に対して、支援の輪を広げる努力もしていきたいと思っています。」
取材を終えて
同じ職場で働く植草さんと丸山さんも交えて、ご自身の実体験を踏まえながらインタビューに答えてくださった。“生活・住居”の相談を中心に“子育て・教育”、“就労”や“介護・福祉”の支援など多岐にわたる業務をこなし、さらに避難者一人ひとりの異なるニーズに合わせた支援を行うのは非常に骨の折れる仕事だと感じる。川崎市に避難されている方々の心安らぐ生活を目指す、中村さん達の今後の活躍に注目したい。
取材日 | 2012年8月22日 |
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取材者 | すくらむ21インターンシップ生(斎藤・永野・藤原・久保田・三澤) |