株式会社シーボン
営業推進部イベントプロモーション課マネージャー 中谷愛子さん
人事部ES向上推進室マネージャー 稲葉理子さん
川崎市宮前区にメインオフィスを置く化粧品メーカーの株式会社シーボン。正社員の90%以上、管理職85%以上、そして役員の60%が女性という女性活躍先進企業である。2017年には女性活躍推進法に基づく「えるぼし企業」最高ランク認定を取得した。女性が活躍する社風はどこから生まれるのか。管理職として働く営業推進部の中谷さんと、ES向上推進室で社内の制度作りに携わる稲葉さんにお話を伺った。
いちシーボンのファンとして
中谷さんが美容業界へと進んだきっかけは、美容関係の仕事に就いている姉と母の存在があったという。メイクよりも素肌を綺麗にすることに関心があった中谷さんは、美容業界のなかでも基礎化粧品に力を入れる株式会社シーボンに就職することを決める。
同社に入社後、2年間サロンでの勤務を経験した。実際にお客様と接する中で「自分が化粧品について知らなくては魅力を伝えられない」と考え、自社の化粧品を積極的に使用した。自分が使うだけでなく母や姉にも使用してもらい、使い心地や肌の様子を聞きながら、自社の化粧品を勉強する。それをお客様に伝えることがなによりのやりがいだったという。「お客様にシーボン.の化粧品の魅力を伝えたい」という気持ちで周りに働きかけた中谷さん。すると、いつの間にか自分自身もシーボン.の化粧品に惚れ込んでしまったという。「いちシーボン.のファンとして働きながら、これからも使っていきたい」。仕事のモチベーションが上がり、その経験が現在の業務にも結び付いている。
マネージャーとしての心がけ
中谷さんは、現在、営業部推進イベントプロモーション課のマネージャーとして活躍されている。イベントプロモーション課とは、全国各地で行うプロモーションイベントを通してシーボン.を知らない方へ広告宣伝活動を行う部署である。創業51年目を迎えるシーボンだが、イベントプロモーション課は出来てからまだ10年。そこで管理職を務めるなか、日頃心がけていることややりがいをお伺いした。
中谷さんは「イベントを通して、たくさんのお客様に出会えることや、部下の成長する姿を見守れることにとてもやりがいを感じます。またイベントを通して、シーボン.に興味をもって頂いた方に、化粧品を愛用してもらえるととても嬉しい。一人でも多くの方にシーボン.の魅力を伝えていきたい。」と語る。中谷さんは同僚と気軽に相談し、助け合える関係を作っていきたいと考え、ランチの時間などを活用して積極的にコミュニケーションをとる。「仕事以外の話もたくさんする」このような心がけが、部下たちにとっても「働きやすい環境づくり」に繋がっていくと考えている。
母親になる時間と仕事をする時間
現在、2歳のお子さんをもつ中谷さんは、1時間の時短勤務をしている。育児休業から復帰した当初を「1年目は想像以上に仕事と育児の両立が大変だった。子供の発熱から突発的に仕事を休むことが増え同僚に迷惑をかけた」と振り返った。だが、徐々には生活リズムに慣れ「時間のマネジメント」を心がけるようにしたという。勤務時間が短くなる分、朝の時間を有効活用し、出勤してから一日の業務を整理して、無駄な時間を極力省き、「母親になる時間」と「仕事をする時間」のメリハリをつけているのだと教えてくださった。
「お互いさま」という言葉
世間では出産・育児を機に退職する女性も多いといわれるなか、中谷さんは「復帰をして働いている先輩たちの後ろ姿をみていた。その姿を見て、シーボン.が『子育てをしながら働ける環境』であることを理解していた。また、『子育てしながらでも仕事は続けたい』という仕事に対する思い入れがあった」と語る。しかし、復帰した当初は「時短勤務の中で管理職としてマネジメントできるのだろうか…」という不安ばかりだった。そんな中谷さんを支えてくれたのは、周囲の存在。たとえば、保育園からの呼び出しがあった時、上司に家庭を優先するようにしてもらえた。なにより同僚からの「お互いさま」という言葉が心の支えとなった。「周りが気遣ってくれたおかげで戻れた。今度は私が返す番。『お互いさま』と思いながら接するようにしたい」。同社の支えあいの文化はこうして継承されていくのだろう。
株式会社シーボンの女性支援
女性が長く働き続けるためには何が必要か。ES向上推進室でマネージャーをつとめる稲葉さんにもお話をうかがった。ESとはEmployee Satisfactionの略。従業員満足度の向上を目指し、様々な取り組みを展開しているという。稲葉さんのお話の中で、同社の取り組みのキーワードとして「働き方」「家族」という言葉があがる。
同社では、ライフステージごとにきめ細かい制度を設けて多様な働き方を実現している。例えば、育児・介護期の社員に対しては、「育児休業(最長3歳まで)」「時間短縮勤務(小学校入学まで)」「ショートタイム正社員※1(最長小学校6年生まで)」といった制度を整備し、ライフイベントによって生じる影響を最小限に留められるようバックアップをしている。また制度の活用推進を図るため、子育て中の社員はもちろんのこと、介護中の社員、60歳をすぎても現役バリバリに活躍する社員等のインタビュー記事を社内報で紹介し、お互いが理解し、協力し合える風土作りに努めている。他にも、女性が働きやすい環境づくりへのアプローチとして、どういう風に、どのような働き方をしたいか等、それぞれの社員の「働く上での気持ち」を重視し、適材適所の配属を行っているそうだ。
同社独自の取り組みに「C’BON Family Day」がある。社員の家族に、実際に働く職場や仕事内容を知ってもらうイベントである。参加した子どもの意識に大きな変化がみられるなど、母の仕事を体験することで、「お母さん、こんな会社でこんな風に働いてるんだ」ということが分かる。母の仕事がイメージできると、安心感に繋がる。その結果、子どもの仕事に対する理解が深まる効果があるのだという。参加した社員からは、「子どもの意識が変わってとても助かっている」「保育園行くのを嫌がってた子どもが、お母さん、いってらっしゃい!頑張ってね!と言ってくれるようになった」という声があがっているそうだ。「だからこそ、必ず楽しませる企画を考え、『シーボン.は楽しかった!』と感じてもらえるように心掛けています」と稲葉さんは語る。働くためには家族の理解、バックアップが必要不可欠。社内環境だけでなく、社員の家族へも働きかけるような取り組みも展開しているのである。
学生へのメッセージ ~仕事は楽しく、長く、続けよう~
中谷さん:働くうえで大変なことはたくさんある。「私が好きな言葉は、シンプルですが『継続は力なり』。大変なことってたくさんあるけど、乗り越えた先には学びや成長がある。その経験から人としての深みも出てくると思います。ぜひ色々な経験を重ねて自分自身を成長させていってほしい。」とエールをくださった。
稲葉さん:「働くって楽しいですよ」と稲葉さんは笑顔で語る。もちろん辛いこと、大変なことはある。しかし、それも一生懸命働くことで楽しさに変わるという。「ぜひ『働くって楽しい』と思いながら働けるよう、頑張ってほしい。」とエールをくださった。
編集後記
取材を通じて、中谷さんの輝きの源は「仕事に対するやりがい」はもちろん、「スタッフの理解」があることがわかりました。中谷さんにとって、大きな障壁を乗り越えさせてくれる力強い支えとなっているのではないかと感じました。
また、「C’ BON Family Day」のような社員の家族が自分の目で直接見る(体験する)イベントが、仕事に対する理解を深める良い機会になると実感しました。このような機会を創出するために、私たち若い世代が先頭に立って世の中へ発信していきたいです。
(インタビュー:田中、山口、井上、山地、藤岡、田村)
※1 結婚・育児・介護など、ライフステージに合わせて、6時間勤務が可能な正社員のこと