このページでは、親子で一緒にたのしめる絵本を紹介しています。
人は誰でも、こどもから大人になって年老いていきます。その間でいくつもの不安や恐怖に出会うものですが、その度に不安の正体を見極めつつそれらを受け入れ、乗り越えて生きていくのだということを改めて気づかせてくれる絵本です。 “ぼく”と“おじいちゃん”のおさんぽが、幼い“ぼく”をゆっくりゆっくり育てていく様子が、静かな独白の形で語られます。その度に、おじいちゃんの「だいじょうぶ、だいじょうぶ」にはいくつもの意味がありました。
「どうしよう」と思った瞬間に「だいじょうぶ だいじょうぶ」という声を聞くとわけもなく、なぜか、冷静になって落ちつくことができる。いつしかこの不思議な言葉が呪文のように、ぼくにとって「生きる」支えになっていきます。幼かったぼくは世の中のことを受け入れ、理解し、おじいちゃんは年老いて弱っていきます。今度は、ぼくの方から「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と声をかけ励ますことになります。
人間社会のまさに世代交代・バトンタッチのひとつの形です。
いじめっ子に出会ったとき、道に迷ったとき、誰でもいいから「だいじょうぶ、だいじょうぶ」といってくれる人が傍にいてくれるといいのになあ、という声が聞こえてくるようです。そして、最後は、「もっと もっと、たくさんの ひとや どうぶつやくさや きにあいたいな」とおさんぽしたくなる自分がそこにいるのです。黄色、白、青、緑の抑えた色使いでシンプルな絵ですが、登場人物の動きと会話がきこえてくるような絵本です。 折に触れて、身近な町を散歩しながら「このよのなか そんなに わるいことばかりじゃないってことでした」(本文)という言葉をかみしめながら身近な人々にそっと伝えあいたいと思いませんか。 「だいじょうぶ だいじょうぶ」ってー。
※紹介文は、ブックインフォメーション2015年9月号より抜粋しています。