『「ふつうの家族」にさようなら』
発行日:2021年2月発行
著者:山口真由
出版社:㈱KADOKAWA
発行日:2021年2月発行
著者:山口真由
出版社:㈱KADOKAWA
著者の山口真由氏の経歴は華麗だ。東大法学部を首席で卒業し、キャリア官僚、弁護士として働いた後、ハーバード・ロー・スクールへ留学、NY州弁護士登録、帰国後は東大大学院で日米の家族法を研究し博士号を取得、現在は信州大で教壇に立ちつつ、朝のニュースワイドショーにコメンテーターとして出演している。
「『ふつうの家族』―それは聖なる呪いである。」本書の書き出しはこんな一文だ。ピカピカのキャリア女性が「ふつうの家族」を批判して多様性を称賛しているのかと思いきや、思い込みはみごとに外れた。著者の原家族、友だちの家族をめぐる回想から始まり、精子バンク、代理出産、同性婚、不妊治療、老親の介護などをめぐる日米の議論が法律家らしく判例も交えて、切れ味よく、でも難しい法律用語ではなく、わかりやすく紹介されている。著者の実体験もリアルに書かれており、その気持ちの揺れ、傷つき、熱さ、温かさに、読み手自身の経験が共振する。「“ふつう”を押し付けられたくない私は、“多様性”を押し売りしたくないわけでもない。」と著者は書く。アメリカで始まったという「家族」を探す著者の旅はまだ終わりそうもない。