『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』
発行日:2022年9月
著者:ハリー・ベンホールド 訳:篠儀 直子
出版社:青土社
発行日:2022年9月
著者:ハリー・ベンホールド 訳:篠儀 直子
出版社:青土社
「切り裂きジャック」と聞いて、何を連想するだろうか。ロンドンの夜霧に潜む正体不明の殺人鬼。繰り返し小説や映画に登場するおなじみのキャラクターだ。
一方で、被害者となった5人の女性たちについてはどうだろう。彼女たちは事件後、差別と偏見でできた衣を纏わされ、地中深くに葬り去られた。彼女たちを貶めたのは、検察官や新聞記者といった当時の“権威”であり、彼らの言説のままにこの事件を語り継いできた後世の人々―私たちである。
著者は、気の遠くなるような作業を経て、そんな彼女たちの人生のすべてのページを語りなおした。そこから浮かびあがってくるのは、19世紀後半のイギリスという不合理に満ちた社会を生きる女性の姿だ。彼女たちは確かに、一人の人間として尊重されるべき存在なのだ。