杉原志保さん(かわさき市民活動センター)
杉原さんは大学院時代から男女共同参画に関心を持ち、地域活動と研究を両立し続けてきました。現在は神奈川県川崎市内にある、かわさき市民活動センターの市民活動推進課で働いています。杉原さんの仕事や、ご自身の経験をふまえた女性のキャリアについてのお考えなどをうかがいました。
市民活動団体との話し合いの中で
杉原さんは、かわさき市民活動センターでどのようなお仕事をされているのですか。
私が担当している市民活動推進課では、「これから活動を始めたい人」や「すでに始めている人」が行う事業の成長や組織課題のフォローなどをしています。市民活動団体は大規模な組織もあれば、小規模な組織もあります。みなさんは、「資金がない」、「場所がない」、「情報発信が十分ではない」、「メンバーが少なく一部の人材でまわしていて自転車操業になってしまう」など、さまざまな課題をお持ちです。
相談は、「何か始めたい」という内容が多いですね。そういう相談を受けた時は、話し合っ て、さまざまな方策を練っていきます。活動は、地域社会に課題を発信するための手段であり、とても重要なことなので、私たちは広報に関してのサポートもしています。
お仕事をするうえでどのような点を工夫していますか。
事業を実施する際は、必ず以前に行ったことを振り返ります。その過程で必ず出てくる課題は次の事業企画に反映し、活かしていくよう常に意識しています。課題を据え置かない姿勢は、さまざまな方とともに地域づくりをするうえでの最低限の礼節だと思います。
仕事においてやりがいや嬉しさを感じるのは、どのような時ですか。
どの仕事にもやりがいはありますし、嬉しさを感じるところもあります。特にやりがいや嬉しさを感じるのは、助成金の申請相談などの次年度事業の計画を話し合うなかで、時に厳しい意見をたたかわせたり、色々相談を重ねたりして団体さんが自力で活動できるようになったなあと実感できるときですね。つくりあげていく過程は一番大変だし、多くエネルギーを使いますが、後にメンバーの方から感謝の声などをいただいた時は、本当にありがたいと感じます。それらが、「市民活動を応援していこう、一緒に頑張っていこう」という原動力にもなっています。
女性のキャリアと、地域社会
では、女性が社会や地域で働き続けるうえで必要なことはなんですか。
キャリア形成を考えた場合、大半の女性は結婚をして出産や育児などで職を離れざるをえなくなり、その時にキャリアがいったん途切れてしまう、地域から切り離されてしまうということがあります。私の場合は、出社しなければならない仕事だけでなく、在宅で出来る仕事、あとは出社しても在宅でも出来る仕事をかけ持っていて、それを時期によって使い分けることによって常に仕事にかかわり続けることを大切にしたいと思っていますね。また、関連する可能性のある仕事を兼務するのも大切だと思っています。色々な情報を収集して参考に出来るし、常に一方からの情報だけで判断したり、物事を判断する視野が狭まることがないように思います。
また、家事労働との関係からいえば、忙しい時こそ家事を無理に頑張ろうとしすぎないことも重要かなと思っています。すべてパーフェクトに行おうと無理に頑張っても、ピリピリしてきて、パートナーにも影響を与えてしまい、自分も相手も心地よくなくなってしまいます。自分の中で、仕事と家事のバランスを図ることが必要だと思っています。
キャリアの形成にあたって、ご自身で大切にされていることは
どのようなことでしょうか。
本などを読むことも大事だと思っていますが、今は地域の方や団体さんの声に耳を傾けることを大切にしています。本からは理論や考え方を学ぶことはできますが、現実は、すべてがそのとおりになるわけではありません。
たとえば、「今○○をしています」「こういう企画をしようと思っているのだけれど…」などの団体さんが伝えてくださる声は、現場でしか聞けない声であり、社会課題に通ずるさまざまな示唆に富んでいます。多くの人たちの話を聞くことを通じて活動の現状を把握できるなど、本を読むだけでは得られないリアルがそこにはあると思います。もちろん新しいことを始める時や時代の趨勢を把握したり、自分の中で方向性が分からなくなったりした時には、新しい本などを読んで栄養として蓄えていきますが、理論も現実の生活があってこそ生きてくると私は考えているので、現場の声を大切に、声なき声を社会化していこうと思っています。
取材を終えて
杉原さんは、実際の現場で活動している方の声をとても大切にされていて、今までの知識と現場の声を総合して対応策を練るなど、とても頼りがいがある印象を受けました。
また、杉原さんは、女性が社会参画をするために、キャリアを途切れさせず、なにかしら仕事とのつながりも保ち続けていくことが大切だというお話は、とても参考になりました。
取材日 | 2012年8月21日 |
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取材者 | すくらむ21インターンシップ生 嶋田 弘之、石川 智規、細根 裕太、堤 智香、長野 千香子、美齊津 明澄、小澤 晴香 |