本田真人さん(川崎市立高津小学校)
本田さんは現在教員6年目、5年生の担任をしている。以前は料理人として6年間鉄板焼き屋で働いていた。このまま料理人を続けることに疑問を感じ、改めてずっと続けられる職を考えたときに、自分の指導による後輩の成長を感じ、それと同時に、お店が活気づいていくことを知った。そこで「教えることは楽しい」ということに気づく。何事にも中途半端な自分を「幅広く興味がもてる」とプラスに捉え、全教科を教える小学校教員になることを決意した。あまり勉強が得意ではなかった自分が、いきなり教壇に立つのは自信がなかったので、知り合いの紹介により、特別支援学級のサポーターとして3年間経験を積んだ。そして現在の職に就く。
自分で考えることの大切さ
「先生とは『?(ハテナ)』をたくさん与えられる人」と語る本田さんは、児童からの質問にすぐに答えを与えない。なぜなら、教員になりたての頃は、児童からの質問にすぐに答えを与えていたが、それでは児童が自分で考えなくなってしまうと感じたためだ。生徒に自分で考えるという習慣をつけるという意味でも、今では児童に「あなたはどう思う?」と問いかけ、彼らに考えるきっかけを与えている。そして児童自身がそれを追及し、行動に移したらしっかりと褒めるという指導を行っている。そうすることで、児童は考えることの楽しさや大切さに気づき、主体的に考えられるようになっていくという。
また、本田さんは「目標を真剣に考えて、真剣に取り組むクラス」をめざしている。クラス目標は児童自身で決めるよう投げかけている。目標を明確にし、そのために今何をすべきかに自分で気づき、考え、行動し成長していけるよう手伝いをする。それが本田さんの方法だ。児童に対してだけでなく、自分自身も常に「自分はどうしたいのか?」「自分は何になりたいのか?」を考え、その目標へ自分をどう導くかを意識しているという。「その子への教えが本当に良かったのか分かるのはおそらく10年以上先のことだと思う。しかし毎日が楽しくないわけではなく、児童のできることが増えたときなどの、小さな喜びをたくさん感じられるところが楽しい」と語る。
教育って学校だけじゃない
本田さんは、「教育というものは、地域・家庭・学校の3つの柱がとても大事だ」と語る。社会との関わりを学ぶ地域と、勉強や決まり、人との関わりを学ぶ学校、そしてマナーや基本的な生活習慣などを学ぶ家庭が三位一体となって子どもを育てることで、日本の教育がますます安定すると考えているからだ。残念ながら現状は地域で子どもを育てる意識が薄れ、「家庭」「学校」での教育レベルは十分ではないと感じていて、「子どもだけでなく、親も育てる」という考えのもと家庭の協力が必要と考えている。懇談会時には「教員の立場からの子どもとの接し方講座」という形で担任と保護者との間で情報共有を行い、家庭での子どもとの接し方についての提案を行っているという。実際に、数名の保護者から「もっと教えてほしい」と言われ、個人面談などで、子どものしつけ方、叱り方、褒め方の提案もしている。
コミュニケーションが信頼を生む
本田さんは、児童や保護者との信頼関係をしっかりと築くことが大事だと考え、常にコミュニケーションを大切にしている。保護者と情報共有をする時でも、限られた時間の中で相手に自分の考えを理解してもらうための努力をしている。また、同僚である教師とのコミュニケーションを大切にするよう心がけているという。本田さん自身も職員室で挨拶をするよう心がけており、児童にも自分の姿から、その大切さを感じてほしいと願っている。そして、最後に、「挨拶、コミュニケーションを大事にすること。それは社会へ出たとき、人間関係を築くのに必要なこと。」と私たち学生にアドバイスしてくれた。
編集後記
ただ教えるだけではなく、児童と真剣に向き合っている印象が強かったです。児童の導き方についても、自身の経験から考え、改善したことを話してくださり、私たちへのメッセージとして心に残りました。取材時も話しやすい環境を作るということを意識されていて、人とのコミュニケーションを大事にする本田さんの魅力を感じました。
(インタビュー:岡本和哉、根來潤之介、藤本紗貴、三井崇弘、宮田充浩、宮本信世)