高 原さん(㈱バンダイ)
高さんは、株式会社バンダイで海外にある取引先工場の労働環境監査のほか、自部署の部長秘書を担当している。3歳と1歳の子どもを持つ母親でもあり、入社後、結婚、出産、育児を経て、現在は時短制度を活用し、業務時間を10~16時に短縮しながら、第一線で働いている。
育ってきた環境から、今でも
高さんは6歳のころ、中国から日本に移り住んできた。日本語が不自由ながらも慣れない環境で懸命に働き続ける母の姿を見て育ち、家庭でみせる顔とは異なる顔を持つ母にかっこよさと憧れを感じていた。その影響か、働き続けたいという思いも自然に持つようになったという。そのような思いを根底に持ちながら「自分が身近に感じられるものを扱う仕事をしたい」というかねてからの考えで、第一希望のバンダイに入社した。
高さんは結婚し、2人の子どもに恵まれ、現在は子育てと仕事を両立している。環境が劇的に変化しても仕事を続けることができたのは、自分が母に抱いたような憧れを子どもにも感じてもらえれば、という気持ちがあるからだ。子育てと仕事のバランスのとり方については模索が続く毎日だが、高さんにとって子どもと過ごす日々は自分の生き方を深く考える機会となっている。子どもが成長するたびに生じる葛藤に正解はないが、自分が選んだことが子どもの成長に影響を与える。だからこそ、高さんはこのプロセスをとても大切にしている。
人の気持ちに応える生き方
高さんは、異動や結婚・出産など常に変化する環境の中で、周りの変化や状況をしっかり見つめて、自分なりの答えを導き出してきた。
入社2年目での結婚は、自分としては少し早く感じる部分もあったが、パートナーと話し合いを重ね、自分なりの納得のいく答えにたどりつき、結婚を決意した。産休や育休、時短制度などが職場にあり、実際に働きながら子育てをする人たちも周りにたくさんいた。産休を取得した時も、上司の温かい言葉と職場の理解を得られ、喜びを強く感じることができたという。
その後、子どもを育てながらの人事異動も経験した。現職に異動になったときは、初めての監査の仕事に不安や戸惑いもあったが、工場の労働環境を改善する仕事は、直接消費者に関わることは少ないが、商品をつくる作業に関わるすべての人の思いに応える仕事であることがわかった。もし自分が工場の問題に気づけず、何かが起きた場合、商品を世に送り出すことができなくなってしまう。そのようなことがないよう、高さん自身のなかでも業務改善に努め、責任を持って効率よく仕事をするようにしているという。気持ちのよい労働環境をつくることは、働いている人の意識や商品の品質向上にもつながる。それは現場の声として自分のもとに届き、喜びや働きがいになっている。
できないことはないんだ
高さんは仕事と家庭の両立をするにあたり、忙しい中でもやらなければいけないことを効率的にこなすため、身の回りの環境を整えることを意識している。家事が気持ちよくできるよう整理術を勉強し、今では趣味にもなっている。仕事においては、時短勤務の中で与えられたものを効率よくこなせるよう、意識的に努力しているという。このような工夫が、家庭や職場において心に余裕を生み、たとえ壁にぶつかったとしても、モチベーションを維持することができるのだ。与えられた仕事をするうえで、実際に行動し、不安や困難をひとつひとつ打破していくことが「できないことはないんだ」という喜びにつながり、忙しさも楽しめるようになるのだと高さんは語る。
編集後記
高さんのインタビューを通して、母への憧れを持って育ち、自分の子どもにも同じような思いをもってもらえればとの思いで働き続ける一貫したその考えに驚き、また、とても魅力的だと感じた。今の時代、好きだという気持ちだけで仕事と家庭生活の両立を維持できる人ばかりではないので、高さんの仕事への取り組み方を学ぶことができたのはいい経験だった。
(インタビュー:市川綾香、植木愛、岡田和哉、澤田知香 西良太、山田永)