細野 清美 氏(社会福祉法人セイワ川崎授産学園 副主幹兼施設長代理)
細野さんは現在、障害者支援施設(通所)で施設長代理をしています。入社33年目、ベテラン職員から学んだことを新人に伝えることでリーダーと化していったといいます。2003年にはこれまでと異なる高齢者部門の副施設長に就任し、異なる分野の支援方法に戸惑いつつもチャレンジし、現職に至ります。管理者になり、現場の利用者との関わりから勤怠管理や事務仕事が増え、最初は気が進まなかったものの、次第に「誰かがしなければいけない仕事」であると思うようになり管理職としての意識が芽生えていったといいます。また、仕事ぶりを頭ごなしに否定しない先輩たちの姿勢もチャレンジを後押ししてくれたといいます。仕事が好きで、出産時も仕事を辞めようとは思わず、家族や周囲の協力のもと、仕事を続けてきました。次世代を担う女性たちには、興味ある事で研鑽を積み仕事の幅を広げていってほしいと伝えています。
(H25年11月インタビュー)
現在、どのような仕事をしていますか。
障害者支援施設(通所)つつじ工房(生活介護事業・就労継続支援B型事業・短期入所事業の3事業実施)の施設長代理として働いています。麻生・多摩区在住者を中心に、在宅の方やケアホーム等の主に知的障害者の方が62名利用されています。生活介護事業の「作業」には、大きく別けて二つあり(外作業と中作業)、それぞれ作業内容が異なるため、各作業にリーダーを配置し、作業内容の充実を図るため、日々リーダーへの指導・助言を取組んでいます。勤務時間は8:30から17:00までですが、利用者対応があるため、管理業務の事務仕事は夕方以降になることもあります。
また、毎日朝夕にミーティングを行いますが、朝は迎え業務により事業所内の職員が少数となるため、主に夕方の帰宅送り業務時に事務所からの連絡や日々の利用者に関する状況報告等を行い、円滑な事業展開が出来るよう職員との密なコミュニケーションを心掛けています。
入社後のキャリアについて教えていただけますか。
当施設の事業開始(1981年10月)とほぼ同時に入社し、入所部門の現 障害者支援施設つばき寮のスタッフとして配属され、結婚を機に通所部門である現 障害者支援施設つつじ工房に移りました。最初にペアを組んだベテラン職員から指導を受けていましたが、その方が異動し、新人と組むことにより、否応なく外部交渉や連絡担当等の業務を任され、徐々にリーダーとなっていきました。その後、所属変更と同時に職務であるチーフ職に就き、約20年間つつじ工房に在籍しました。
2003年からは、同じ法人内にある介護老人福祉施設の副施設長に就任しました。10年ほど在籍し、2013年に異動により現在の障害者支援施設つつじ工房に戻りました。
キャリアアップしていくうえでの転機があれば教えて下さい。
介護老人福祉施設の副施設長として異動した時でしょうか。人事異動は何度も経験しているので問題はないのですが、これまで障害部門の支援を専門にしてきた私が高齢部門に異動となり、この時ばかりはどうしようかと思いました。当初は障害者と高齢者の支援方法等に戸惑いがあり、一人ひとりの顔を覚えられず何をしていいのかも分かりませんでしたが、名前を覚えることから始め、会話の糸口を見つけ、障害部門での経験を基に想像していたより早く現場に慣れることができました。当時の施設長が元上司だったことは、私の心を軽くしてくれました。障害部門と高齢部門でも福祉においては、共通であると感じました。
管理職になってから、仕事に対する受け止めはどのように変化しましたか。
仕事を始めた当初は、今の立場で仕事をするとは思いもよらず想像もつきませんでした。働き続けていたら知らないうちにこのポジションになってしまいました。こんな感触を持っています。昇進することよりも利用者と関わりたいという気持ちが強くありました。
管理者になり、勤務等の管理や請求業務等の事務仕事が増えたように思います。当初はあまり気がすすみませんでしたが、次第に「誰かがやらなければいけない仕事だ」と思うようになり、管理者としての意識が芽生えたのかもしれません。
仕事をするうえで大切にしていること、意識していることがあれば教えて下さい。
勤怠管理については、夜勤もあるため、担当職員の労働時間が長くならないよう調整しています。たとえば、ある職員だけが土日勤務が続くようなことのないようにしたり、急遽休まざるを得なくなったときに、代替してもらう職員にきちんと振替休暇を取得出来るようにしています。行事が近づくと必然的に忙しくなるので、職員の健康管理を考え早く帰るように促しています。
また、現在職員は常勤16名非常勤10名が在籍しています。職員は通常週5日勤務で、業務に従事しています。非常勤の中にはさまざまな経験を積んだことにより仕事への意識が高い人もおり、稀に新人の常勤職員とのあいだに障壁が生じてしまうこともあります。この仕事はチームワークが大切です。非常勤の方の気持ちを汲みながら、常勤職員の仕事ぶりを気にかけ、意識を向上させるようボトムアップを積極的に取り入れ、管理者としての調整を行っています。
加えてマネジメントをする立場として個別相談やアドバイスなどを頻繁に行っています。たとえば仕事にのめり込み過ぎないように趣味を持つように伝えることや利用者の方のことを抱え込まないよう指導しています。この対応策として朝夕のミーティングを特に重要と考えています。
ワーク・ライフ・バランスについて、仕事以外のプライベートはどのように過ごしていますか。
自宅には仕事を持ち帰らず、オンとオフの切り替えはしっかり行い、元気に働くことができるよう、休日はジムに行って体を動かしたり日帰り旅行に出かけたりしています。時にはマッサージで心身ともにほぐし、ストレスを溜めないよう心掛けています。
今の仕事を続けてこられた理由はどこにあるとお考えですか。
両親が共働きだったこともあり、働き続けることに対しての抵抗感はありませんでした。出産のときも仕事を辞める話は全くありませんでした。仕事が好きであり、夫も同じ職場で理解を示してくれたからです。当時、産前・産後休暇制度はありましたが、育児休業休暇制度はなく、先輩職員の妊娠を皮切りに当時の上司が法人に安心して出産・育児が出来る制度を働き掛けてくれました。休職扱いで経済的負担はありましたが、また働くことができるという安心感は代えがたいものでした。復帰後、家事や子育ては夫と助け合いながら行い、育児時間を取って保育園の送り迎えをしたり、子どもが熱を出したときなどは車で1時間かかる実家に連れて行き子どもを預かってもらいました。家族の協力を有りがたく思います。
社内の風土、状況を教えていただけますか。
1人目を出産した時は「頑張って仕事を続けます」という職員も、2人目になると子供の病気時の大変さで辞めてしまう方もいて、仕事と子育ての両立には周りの協力が必要だと感じます。夫と話し合わないと、やりきれなくなってしまうこともあるので、あまり無理はしないでほしいと伝えています。
法人としては、育児休業休暇・育児短時間勤務・子の看護休暇等の制度を積極的に取り入れ、女性職員の働き易い労働環境の整備を行っています。
また、チャレンジできる環境も備わっていると思います。それは入社当時、新卒の私たちの仕事を先輩たちは頭ごなしに否定せずむしろ「やってみたら」と後押ししてくれました。社風としてやる気のある職員に対しては困難な業務でもやらせていただける風土があると感じます。
福祉系の学校を卒業した職員もいれば、別の分野からの職員もいます。半々くらいの割合でしょうか。法人全体では、女性より男性職員の方が多いです。異なる業種からきた中途採用者もかなりの数の在職者がいます。そのような方たちを対象とした専門研修に力を入れています。基本この仕事は人を相手とする仕事で、実際に利用者の方とのコミュニケーションを通じてどれだけ工夫をこらせるかが大切だと感じています。
今後手がけていきたい仕事はどのようなものですか。
異動して現在職員が入れ替わったばかりなので、これからいかにチームの歯車をうまくかみ合わせていくかが課題です。120%の力を出して働いている人もいれば、50%の力で働いている人も中には見受けられるので、皆が80%くらいの力で、余力のある状態で働いていけるような職場にしていきたいです。仕事と私生活の充実を心掛けているからです。
また、高齢部門から障害部門に戻ってきて、利用者・家族・関係者の高齢化が目立つようになりました。利用者等の今後のためにも、必要な機関との連携・調整をこれからも積極的に行っていきたいです。
次に続く女性たちへメッセージをお願いします。
自分の仕事の幅を広げるためにも、福祉関係の仕事であれば社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャーなどの資格取得はもちろんですが、興味のある事柄へ研鑽を積み、仕事の幅を広げてほしいと思っています。