クルーズ由美子さん(株式会社叶屋)
クルーズさんが代表取締役を務める株式会社叶屋は、業者向けに砂やセメントなどの建材販売・施工をするだけでなく、個人向けの事業として建物本体を除く、植栽や植込みなどの造園工事や、駐車場のアスファルト工事、ブロック塀などの家周り工事も行っている。
立ち止まらずに、突き進む
クルーズさんは、もともとはファッション業界に興味があり、ある有名な百貨店への就職を希望していた。そこで最終面接である社長面接まで進み、ほぼ内定が決まったも同然のところまでいったという。しかし、その頃小さなお子さんがいて保育所がまだ見つかってないということを正直に話したところ、まだ当時は家庭と仕事の両立への理解が少なかったことが原因になったのか、採用されなかったそうだ。普段落ち込むことが少ないというクルーズさんも相当ショックを受け、この時期が一番辛かったと振り返っていた。
しかし、このまま立ち止まっていてもしかたないと、すぐにそこから動き出そうとしたこと、当時は合資会社叶屋商店代表社員をしていた父親から声がかかったことが重なり、叶屋で働き始めるようになったそうだ。その後、いくつかの問題を持ち前の行動力で解決したことを買われ、代表取締役の話が上がり、2013年7月に就任した。現在は代表取締役として、取引先、新規開拓の外回り、個人のお客様向けの店舗運営やイベント開催などアクティブに働くとともに、保険の制度や社員の働きやすさなどの社内のインフラ整備、そして金融機関とのやりとりも担っている。
考えすぎずに、まずは行動!!
インタビューの中で最も印象に残っているのは「行動力」という言葉である。何事もとりあえずやってみることで刺激を受けて、成長できると話す。
また、経営者という立場になってから経営に関する本をたくさん読むようになったというクルーズさんは、その中でもファッションブランドFOXEYの代表取締役である前田義子さんから影響を受け、参考になったお話をして下さった。その1つは「全部とっておくのはよしなさい」ということで、仕事でも人間関係でも、いらないものがたくさん溜まってきりがないから、定期的に捨てていくべきだということ。自分が選んだ好きなものに、エネルギーを集中させること。そしてもう一つは、「人間関係は欲をかかない」ということで、誰にでも好かれたいという思いや、上手くやっていきたいという思いはあるが、そのことだけを考えて行動していると自分が何をやりたいのかわからなくなってしまうという。職場では仕事が円滑に進めばいいのだから、自分の本当に大事な人間関係は何か、自分のプライオリティオーダー(優先順位)は何かを取捨選択しながら、大切なものに時間やパワーを投入して欲しいと語る。
この2つの事柄に共通していえることは、自分の中に余計なものを抱え込みすぎてしまわないで、それを手放し、行動していこうということだと感じた。そうした、考えることよりも行動することを大事にされていることは、子育てをしてきた中での苦労からも垣間見える。
子育ては、「一人で抱え込まずに人に頼るべき」だとクルーズさんは言う。子どもがまだ小さい頃は“いい母親でいたい”、“ちゃんとした大人なんだから”という思いが強く、気持ちに焦りがあった。「会社にも親にも迷惑をかけない!自分でやる!」と意地を張って、それが自分を苦しめていたという。「今思えばそんなことしないで、もっと素直に誰かに頭を下げれたらどんなに楽だっただろう」と振り返り、周りに頼ることはものすごく大事なことだと話していた。
クルーズさんは、子育てが仕事に与える影響を身をもって経験してきたことから、両立支援について、お子さんが熱を出してしまった時やどうしても休みを取らなければならない場合など社員に対し柔軟に配慮・対応をして働きやすい環境作りに努めている。
目指すのは、地域ブランド
仕事をしていて、家周りの外構工事を手がけたお客様からの「近所の人にすごく褒められます!」、「通りがかりの人に、すごくきれいにされましたね!とおっしゃっていただいたんですよ」といった声が何よりのやりがいだという。また、特に地域のお客様との信頼関係が築け、リピーターになってくれることが喜びであり、生きがいになっていると話していた。
クルーズさんは、社長となった現在でも外回りを自ら行う。業者向けの会社だと思われていることが多いことから、個人のお客様も対象に事業を行っていることを知ってもらうため、地域での活動を積極的に行っている。その一環として、叶屋のお店で月に一度イベントも行い、例えば8月には子ども向けの木工教室などを開いて、地域の方々との交流を大切にしている。
「叶屋に任せれば大丈夫」。そんなことをいわれるような地域のブランドを目指して、クルーズさんは行動し続けている。
編集後記
インタビューを通じて、地域の方々の喜びのためにという熱い思いを持ちながら、時にフランクな雰囲気やチャーミングな笑顔をお持ちのクルーズさんはとても魅力的でした。また、失敗を恐れずに突き進んでいく姿勢から、“しん(芯・心・信)”の強さを感じることができました。
インタビューに行く前の私たちはどこか消極的で、ありとあらゆる心配事や不安を抱き、一歩踏み出せずにいました。しかし、クルーズさんの「考えすぎずに、まずは行動!!」という力強いお言葉は、私たちの背中を押してくださったように思います。
「失敗したっていいや!まずはやってみないと!」という意識の変化に、社会に出る前の段階で気づけたことは、大きな一歩となりました。このことを強みにし、“自分らしさ”を持って、行動し続けたいと思います。Yes! We just do it!!
平成26年8月22日
田中汐梨・菅谷栞菜・新井知良