小山久枝さん(VECTOR株式会社)
小山さんはVECTOR株式会社の代表取締役であり、経営面や商品企画開発などあらゆる面でVECTORを支えている。主な業務内容は車や介護道具のデザインや介護ロボットなどの企画や開発で、「人と人との繋がりを大切にした物作りをしていきたい」というポリシーをもち、お仕事をされている。
もっと便利でスタイリッシュなものを
書籍編集の仕事をしていた小山さんは5年前、自動車をデザインする際に、実物大のモデルを製作するカーモデラーである中学時代の同級生の男性と、彼の仕事仲間のカーデザイナーの3人でVECTORを立ち上げた。
きっかけは中学時代の同級生のお父さんの介護や介護施設の様子を見て、自分たちもいずれ行くであろう場所なのに、不便なもの、デザイン性に納得できないものがあると感じたことだった。ものづくりという点で仕事が一致していた小山さん達3人は、「介護の現場にもっと使いたくなるような便利でスタイリッシュなものがほしい!じゃあ作ってみよう!」という思いから製品を作り、ベンチャー企業を立ち上げた。
最初は介護道具・製造販売という方面には素人だったためか、なかなか興味を持ってもらえず、急に売れるということはなかった。だが、繊細さと大胆さを重視したデザイン性や安心・安全を追求した製品のクオリティでは絶対の自信をもち、これまで進めてきたと小山さんはいう。VECTORではカーデザインも手掛けており、モーターショーにも参画している。そんな中、ロボットをデザインから作ってほしいとの提案があり、以来ここ2年間はロボット製作が中心となっている。
快適な生活を目指す
一緒にVECTORを立ち上げたお一人は以前、介護施設で働いていたが、その当時介護をしていると重労働になる時もあり、腰や腕が痛くなった。そこで偶然にも見つけたのが「移乗用ボード」という要介護者が車いすからベッド、またはベッドからベッドへ移し乗せるときに使うものだが、当時使われていた製品は「滑りが悪く腰を痛める」「デザインが良くない」などの理由であまり評判が良くなく、使う人もほとんどいなかったそうだ。
そこで、これを上手く改良して使いやすくするためにはどうすればよいのかを考え開発したのが「らくらくボード」であった。滑りが良くデザイン性も良い物を作ることができたため介護の負担が減り、また、介護者からも喜びの声が聞けたという。この出来事を機に、介護ロボットや介護道具の開発なども手掛けるようになった。しかし「全てを道具やロボットに頼るのではなく人と人との繋がりを大切にしつつも、介護道具やロボットによって快適な生活」を実現するために商品の開発を始めたと小山さんは言っていた。そのため、これからも介護道具や、介護目的のロボットを作っていきたいそうだ。
今まで苦労したこと
「女性がお金のことを口にするな」と小山さんは言われたこともあり、女性が経営や資金に関わることに理解されないこともあった。「とにかく起業して経営者になったら、自分の責任。誰にも相談せず、自分で決断しなければならないことが一番辛かった」と小山さんは語った。決断するクセをつけることや、何か問題を感じたら早いうちに手をつける決断力の早さが要求される。
会議などで相手を説得できる自信を持って議論する力を普段から経験として積むことや、自分で選んで決断する力が起業にはとても重要だと小山さんは語った。
編集後記
インタビュー中の小山さんの目はずっと生き生きとしていました。それは自分が今、仕事を通してやりたいことをしているからこんなにも生き生きしているのだと私たちには思えました。そのため、私たちも小山さんのように将来自分がやりたいことをやり、生き生きとした生活を送り、これからの就職活動や仕事に就いてからも頑張っていきたいと思いました。
(取材日 2014年8月25日)
関口隆太、佐野ひかる、中ちひろ