たくさんの認定資格を持ち、ヨガのインストラクター、ハンドメイドショップを運営し、小児特定慢性疾患と重い知的障害の娘を含む4児の母であり、障害者福祉にも熱心な菅田恵美さん。起業された事業内容について、そこに至るまでの道のり、今後の展望を伺いました。(写真左から2番目が菅田さん)
インタビュー実施日 | 2019年9月2日 |
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インタビュー | 令和元年度インターンシップ生(樋口、江村、土屋、岡田) |
ヨガを教え始めて本格的に起業するまで
高校を卒業していくつもの仕事を経験しましたが、結婚後4年間は専業主婦で不妊治療も経験。念願の産後に、夫の体調不良から手に職の無い私は、ヨガインストラクターの資格を取得しようと思い立ちました。
娘が1歳半くらいでしたので、資格を取るには大変なことも多くありましたが、家族などの協力を得て200時間の養成講座を修了し、その後はすぐにキッズヨガ、マタニティヨガ、シニアヨガの資格も続けてとりました。そんな中、娘が重い知的障害で自閉症と診断を受け、その1年後には一型糖尿病と言う病気を発症しました。娘のケアがあるためパート勤めなどが出来ず、フリーでスポーツセンターなどでヨガを教え続け、その後は自身のヨガスタジオを構えました。4年前に現在の菅生にスタジオを移しましたが、収入にはなかなかつながらない状態でした。
その間に、娘が7歳の頃に離婚でシングルマザーになるという経験をしました。ヨガでは、家賃などを払うと自分の手元にお金が残らない状態でしたので、経営やマーケティングの知識に疎い私は、この時に改めて「きちんと収入を持つことの大切さ」を痛感したのです。その後再婚し、ステップファミリーとして夫の子ども3人と娘、あわせて子ども4人の母になりました。子どもが増えたことで新たに教育資金の心配も加わり、家族のためにも経営を軌道に乗せたいと強く思うようになりました。
2017年3月、子どもたちが中学生以上になったことを契機に、個人事業主として本格的にヨガスタジオの経営の立て直しを始めました。これが起業家としてのスタート。ほぼ同じ頃、副業的な収入を得ることを目的とし、主にハンドメイドのアクセサリーなどの販売で、ショップ「sona+n」を立上げました。
「sona+n」で障害者福祉に関わる仕事をスタート
たまたまハンドメイド販売サイトで「ロゼット」(写真参照)が目にとまり、ロゼットの丸い部分に文字が書かれているのを見つけました。「この丸い部分に、障害や疾患などで困っていることや協力してほしいことを書いて、周りに知らせることができるのでは」と考え、ロゼットの作り方の講座を受け、2018年3月からインスタグラムで販売したところ、多くの方から反響がありました。注文者とインスタグラムでやりとりしながら制作しますが、その中で悩みの相談に乗ることもあります。「見た目ではわからない事情を周囲に知らせることができ、支援の目が広がった」「お守り代わりでとても心強い」と感想を多くの方からいただき、とてもやりがいを感じています。
ロゼットはこれまでに500個ほど販売し、ロゼット以外でもパスケースの形やアイロンプリントできるものなど商品のバリエーションも増えてきました。
障害児/障害者と健常者が分け隔てられている社会を変えたい
娘に重い知的障害があるとわかったのは、3歳になる前の健診でした。不思議なことに高校3年生のときに、もし、将来自分に子どもができたなら、障害がある子どもではないかと思ったことがありました。娘の障害がわかり、「やっぱりな」と妙に納得したことを覚えています。娘の障害のことは、すんなり受け入れられました。
それよりも大きな衝撃を受けたのは、娘とともに初めて地域の療育センターに通うことになり、障害児と健常児が明確に分け隔てられている社会に気がついたことです。健常者として生きてきた自分は、人生の中で障害者と1回も関わったことがなく、こんなにも沢山の障害児がこういったところで頑張っていることを知らず、非常に恥ずかしく感じたのと、娘が幼稚園からの入園拒否などを受けて、障害者福祉にいて考えるようになりました。
障害者でも、働く場所があるのは障害の軽い方がほとんどです。重度の知的障害のある娘には、なかなか働く場所がありません。また、施設や作業所などで作業をしている障害者さんの給料も、月給が500円というところもあり、現実です。私は、娘にも他の障害者にも、健常者とともに働き、少なくとも最低賃金以上の賃金を払う職場を作りたい。また、株式会社化して、障害者の従業員が「“企業”で働いている」と、一人でも多くの方が胸を張って言えるような環境づくり、社会づくりにもして行きたいのです。
苦手な経理・経営分野を克服して、娘の働く「会社」をつくる!
起業はしたものの、経営やマーケティングが苦手なのは変わらず、また人と協力して何かをすることや、自分からの発信が苦手なことを克服したくて、2018年10月にすくらむ21の起業プラン作成支援講座を受講しました。ここで知り合えた受講者仲間とは横のつながりができ、また講師には苦手な経理・経営への助言をいただき、とても助かりました。「事業を拡大するためには融資が必要」とのアドバイスを元に事業計画書を作成し、金融機関に資金の相談に行きました。その時の経営状態では融資は難しく、インスタグラム上だけでなく全国的に広くロゼットを販売するためには商標登録が必要だとわかり、商標登録のための資金調達の手段として、クラウドファンディングに挑戦しました。この挑戦は川崎市産業振興財団さん、川崎信用金庫さんからのアドバイスで実施に至ったものです。お陰様で多くの方から賛同を得、目標額を達成できました。
今後は、娘が20歳になる5年後を目途に、海外の方や障害者など多様な人が利用できるゲストハウスカフェを開業したいと思っています。この事業ではひとりでも多くの障害者を「企業」としてきちんと雇用したいと思います。そこに向けて、資金面の充実を図るためにも、オリジナル商品の拡充、ロゼット養成講座・ヨガインストラクター養成講座で収入を増やすことも計画しています。また、養成講座で育成した人材にヨガスタジオとハンドメイドショップを担当して頂き、自分は娘と一緒にゲストハウスカフェの職場に立ちたいと思っています。
起業を目指す人へのメッセージ
行動あるのみ!考えているだけでは何も始まりません。思い切ってチャレンジして、いろいろな経験をしてください。私はですが、行動が先で気持ちやお金は後からついてくるものだと思っています。経験しないと自信は生まれません。興味のあるものには積極的にチャレンジしてほしいと思います。
Information
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シャトレー菅生 202号 - Tel
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