森島土紀子さん(生姜料理 しょうが)
起業までの道のり
起業前は専業主婦で、子供に絵を教えたり、造形教室をしていました。下の子供が中学生になった時、何かしてみたいと思ったんです。もともとは今のような飲食店ではなく、18年前は『仕事着屋しょうが』として2年程、小物や仕事着などを作って販売していました。数年前に出会ったフラワーアレンジメント講師の友人と、新百合に新しくできる商店街で、二人で何かやろうという話が進み、一緒に店を始めることにしたんです。順調でしたが、作成の忙しさが増し、縫う時間もなくなり、家族にも心配をかけたため、徐々に『生姜料理しょうが』にしていきました。
生姜料理の専門店が日本では1軒しかないという珍しさも手伝い、マスコミや雑誌に取り上げられ、お客様も増え、ますます忙しくなりました。年上だったパートナーは4年目に引退することになり、一人で借金の残りを返しながらやっていくことになりました。取材が増えるのに従い行列もできました。お客様をお待たせするのも申し訳ないし、並んでくれた方を逃すのももったいないと思い、9年前『がらがら』という2店舗目を出すことに。そこでも行列ができる様になり、案内しあって、空いている方へご案内をしていました。
3店舗目を考えた時、シルバーの奥様方も多い地域柄、単なるおしゃれなメニューではなく、生姜を使った甘味や健康料理にうどんなどもメニューに加え、女性をターゲットにした、お酒も飲めるお店を作ることにしました。3店舗目を開店して2年目にしてやっと、各店舗に店長をつけ、借金も返すことができました。平成5年に『仕事着屋しょうが』、平成12年に『がらがら』、平成19年『祝茶房紅拍手』そして有限会社を設立するまでになりました。
創業して大変だと感じていること
立地条件もあり、客の出足はお天気にも左右されます。集客のための小さな努力は一杯してきました。18年目にしてやっと今の状態になったんです。それからやっぱりお金のやりくり。最低限のものしか借りずに頑張りました。内装や、ペンキなどは自分達でやり、土台だけはしっかりと作ってもらいました。最初の『しょうが』では保証金含め900万程でやりました。飲食に切り替えるときは家庭用のコンロや冷蔵庫を使って安く済むようにしたのです。その後、徐々に厨房を広げていき、現在までに4回改装をしています。その時々にあわせて徐々にステップアップしていったんです。
創業して良かったと感じていること
毎日が楽しいです。「美味しかった」といってくださると嬉しいですね。夜は若い人に任せていますが、昼間はなるべく店に出るようにしています。取材のほか、起業を目指す女性が遠くから会いに来てくださるのです。3月はスタッフである学生さんの卒業シーズン。別れがあるので、一番寂しい時期なんです。スタッフ同士仲がよく、仲間として頑張ってくれています。毎年別れはありますが、恋人を連れてまた遊びに来てくれる嬉しさも。今日も、以前バイトしていた女の子が遊びにきています。
仕事をする上で大切にしていること
いっぱいありますが、まずは働いているスタッフと楽しく仕事することですね。スタッフ同士がうまくいっていないと、お客様にも伝わってしまうので、みんなが気持ちよく働けるように気を遣っています。そして生姜を大事にすること。生姜を愛すること。生姜をかかさないこと!
起業にあたって利用した市のサービスは?
利用した市のサービスはありません。近くて、なるべく楽に手続きができるところで借りました。1店舗目は10年ローンを組みました。全部返してからでないと、次の店舗を出すときにお金を借りられないんですね。工事も始まっていたのになかなか申請が降りなくて困ったこともありました。資金を集め、夫からも援助してもらい、まずは完済。3店舗目でうまくいかなくなる店も多数あるため、だんだんと、難しくなってきているのかもしれません。
司法書士の友人に色々と聞いたり、自分で書類を読んでみたところ、市の方が安く借りられるようでしたが、手続きの簡単な信用金庫を選びました。夫の友人の税理士さんにも色々と相談ができたので、アドバイスに従いました。11年ほど前に3店舗あわせて(有)土貴を作りました。土は貴いもの。今は有限会社自体を作ることができないので、そのくらい古くからやっているということで、貴重。このまま株式会社にせずに続けていきたいです。
起業を目指す人へのメッセージ
起業を目指す女性は一杯います。何をするにもお金は必要です。やりたいことがあったら、それに向かって、ひとつずつ、ひとつずつやって固めていく。でも絶対うまくいくという保障はありません。もしだめだったらどうするかという最悪の事態を考えておく事は大切です。もし失敗して借金を残してしまった時、ちゃんと返せるのか。だから両親や、夫に許してもらえる範囲しか借りませんでした。一人で何でもやっていける度胸や覚悟はありません。私には家族が大切。家族がいたからやってこれました。それはとても恵まれていたことです。いつも身近に相談できたり、支えになってくれる人がいました。後のこと(もしやめたらそのときどうするのか等)を考えることも大切ですね。
お店のPR
生姜は健康になりたい方の大事な食品。私自身冷え性も肩こりもほとんどなく、頭痛や更年期障害に悩まされたこともありません。朝・昼・晩と少しずつ生姜をとっています。病気をした時も回復がとても速い。少しずつでも毎日とりたい食品ですね。しょうがはもともと好きでした。おすし屋さんに行ってもまずは『がり』を頂くような子どもで、それは今でも変わりません。様々なメニューをお楽しみください。
(※森島オーナーは『生姜三昧』という本も出版されています。このインタビューの後、本を見せていただき、お勧めのだしつゆレシピを教えていただきました。)
店舗情報
TEL:044-951-9797
アクセス:〒215-0021 川崎市麻生区上麻生1-6-3