中村徳能(のりよし)さん(川崎市美容連絡協議会)
今回私たちは川崎市美容連絡協議会についてのお話を聞ききするために、協議会の会長である中村徳能さんが経営していらっしゃる和(より)美容院にお邪魔してきました。和美容室は中村さんの祖父母の代からこの地で営まれてきた、地域に根ざしている美容室です。中村さんには、連絡協議会がおこなっていること、各組合がおこなっていることを男女共同参画という視点を踏まえた上で大変貴重なお話を聞かせていただきました。
連絡協議会がおこなっていること
川崎市美容連絡協議会は主に川崎市にある4つの美容組合の間を取り持つことで、パーマに使われる薬剤等の美容に関する情報の共有を図ったり、お互いの親睦を深めたりする役割と、それぞれの美容組合と市をつなげる役割を担っています。そうした中で成功した事業の1つに『要介護高齢者訪問美容サービス』があります。
要介護高齢者訪問美容サービス
このサービスは美容院に行って美容サービスを受けることが困難な高齢者を対象に1回一律2000円で美容サービス(カット・シャンプー・ブロー)を提供するというものです。このサービスは高齢化による自宅での美容サービスのニーズに応えるために、15年ほど前より市が組合に対して業務を委託するという形で訪問美容サービスが行われています。驚くべきことに、なんと今まで利用者からのクレームが1件もないとのことです。さらに講習会を行うなどして介護ヘルパー2級の取得に組合全体で取り組んだり、高齢者に訪問美容サービスを提供する際の態度の指導を行なったりすることで、このサービスをより良いものにしようと努めていらっしゃるようです。
各組合がおこなっていること
チャリティーカット
『チャリティーカット』とは、1回1,000円以上のカットの収益を寄付しようと年に1度川崎市の4つの美容組合が2つずつにわかれておこなうチャリティーイベントのことです。高津と北部の美容組合では川崎市の美容師のボランティアグループ「PRIC」が主体となってカンボジアの学校建設の費用の寄付するために14年間溝の口にあるてくのかわさき(川崎市生活文化会館)でおこなっており、すでにカンボジアに学校を1校建設し、今は2校目を建設するために頑張っているとのことです。川崎美容組合と中原の美容組合は9月4日(くしの日)の近くの火曜日に川崎地下街アゼリアで、川崎市の長寿社会福祉事業に寄付するためにおこなっており、今年で22回目の開催です。しかし、今年はカットの収益を東日本大震災の復興のために募金されるとのことです。
中学生への出前講座
美容組合では川崎市技能職団体連絡協議会と協力して中学校への出前講座もおこなっています。美容業界も後継者不足に悩まされ、かつては美容師の世界大会で世界チャンピンも輩出した、伝統ある川崎の美容コンテストも参加者の不足のためにおととしで中止となってしまいました。そこで子どもの頃から美容師という職業に興味を持ってもらおうと始められたそうです。中学生に講義をするにあたってとにかく美容師という職業を好きになってもらうことを心掛けており、そのために1年生には遊び感覚で教え、3年生には職業としての美容師を教えるなど学年によって指導方法を変えるなどして生徒を飽きさせないように努力なされているそうです。
男女共同参画の視点から
やはり美容組合の会員の人数比は男性よりも女性のほうが多いようです。また各組合では組合員に対して講習会を定期的におこなっており、そこに参加することで育休により仕事から離れていた女性でも美容業界のめまぐるしい流行の変化にも順応することができ、美容師という仕事に復帰しやすい環境が整っています。
インタビュー 中川知昭 佐藤紗妃
取材日:2011年8月22日