このページでは、親子で一緒にたのしめる絵本を紹介しています。
アフリカの砂漠サバナのバオバブの木はなぜあんなに忘れられないほどの印象を旅人に与えるのでしょうか。 木の周りではキリン、ライオン、象などの動物たちが自然に生活しています。地球上の植物とは信じがたいほどシンボリックな木です。
うっとうしい雨季が終わって砂漠に草が芽吹き、木の芽がのびて花が咲き、実がなると、動物たちにとって楽しい日々がやってきます。カモシカ、シマウマ、ダチョウ、サイなどの動物だけでなく、サボテンなどのたくさんの花が咲き誇っている草原に、エルフという名前のダチョウが動物の仲間たちと暮らしていました。若くて強くて、大きなダチョウで、子どものが大好きなエルフでした。
平和な日々が続きましたが、ある日ジャッカルやライオンがやってきてみんなを襲います。そこでエルフはみんなを守ろうと懸命に・・・。やがてエルフは体が・・・。
あんなに優しかったみんなの心も少しずつ変わっていきます。年をとってしまって、動けなくなっていくエルフ。繰り返し恐ろしい動物が子どもたちを襲いますが、エルフは子どもたちを守り、闘います。アフリカの草原の何気ない景色の中に生きている草花、動物たちとともに砂漠で最後まで生きていきたいエルフの孤独感と苦悩が胸に迫ります。生きるという営みと弱肉強食の自然体系のおきてとの拮抗の中で、エルフの最後の日々が人間の人生と重なります。
最後の1ページの震えるようなバオバブの木は、まるで読者に向け「エルフはここにいますよ」と話しかけているようです。それとも子どもたちとずっとともにいたいという願いが実現した喜びを伝えようとしているのでしょうか。
※紹介文は、ブックインフォメーション2015年5月号より抜粋しています。