川沿いの小道を抜けた先にある河川敷の花園、それは家族と過ごした大切な土地を守るなっちゃんがひとりでつくりあげた秘密の花園でした。戦前に在日コリアン２世として生まれたなっちゃんは、戦後の貧しさと差別の中を生き抜きます。娘として妻として母として女として…人生のさまざまな場面で大きな困難に直面しながらも、愛される人柄とあふれる機知で乗り越えていく姿に胸が痛みながらも励まされます。いじめや貧困により小学校も十分に通うことのできなかったなっちゃんは、50歳を過ぎてから夜間中学校に通って読み書きを習い、文字という力を得て一層力強く人生を切り開いていきます。著者との偶然の出会いで語られることになった壮絶な人生譚。著者は、なっちゃんの経験を通して被差別部落やアイヌ民族の問題にも視点を広げていきます。いくつもの苦労を乗り越えて、「いまが一番幸せ」と語るなっちゃんの言葉が胸を打ちます。