『世界一やさしい依存症入門』
発行日:2021年8月
著者:松本俊彦
出版社:河出書房新社
発行日:2021年8月
著者:松本俊彦
出版社:河出書房新社
薬物、市販薬、ゲーム、SNS、ギャンブル、リストカット…少し考えたただけでもいくつも身近な依存症の例があり、本書にもこれらに依存したごく普通の中学生たちが登場する。ゲームに依存した男子学生は、教育熱心な親の期待に応えようと必死に爪先立ちの生活を送ってきた。しかし、名門中学への入学を機に落ちこぼれ、その現実から目を背けるように自分が主人公になれるゲームの世界に没頭していく。次第に課金を重ね、親に暴力を振るうようになっていき…。
本書を読む前、私は依存症とは何かにハマりやすい人がなる孤独な病気というイメージがあった。このイメージは表層的なものに過ぎず、依存症は誰もがなりうる「病気」なのだと強く感じた。他の病気と同じく、誰もがなりうる可能性がある。だから、なることが悪いのではない、予防すること、そして、周りの人が依存症になった時には救いの手を差しのべることが大切である。著者も作中、依存症とは「人に依存できない病」と形容している。彼らは人に頼れず、ひとりでもがいている。
「世界一やさしい」のタイトルに偽りなく、具体例が多く非常に読みやすい。「困った子は困っている子かもしれない」そう考える人が増えたならきっと日本は生きやすい国になる―そんな優しくも強い著者の願いが伝わる。読み終わった時には、気持ちがすっと軽く、周りの人により少しやさしくなれる本である。おすすめの一冊。