『凍てつく海のむこうに』
発行日:2017年10月
著者:ルータ・セペティス 訳:野沢 佳織
出版社:岩波書店
発行日:2017年10月
著者:ルータ・セペティス 訳:野沢 佳織
出版社:岩波書店
第二次世界大戦末期、ドイツ海軍はソ連軍侵攻で孤立した東プロイセンから軍人、民間人を海路で避難させる「ハンニバル作戦」を行った。「ヴィルヘルム・グストロフ」号は、この作戦に動員された客船の一つで1万人の人々が乗船していたが、ソ連軍の攻撃を受けて真冬の海に沈み、9500人もの犠牲者を出したという。本作はこの事件に取材した歴史小説で、同船で戦火を逃れようとした4人の若者のモノローグで構成されている。外科助手のヨアーナ、ナチス政権に利用されていたことに気づき逃亡するフローリアン、ソ連軍兵士に強姦されて妊娠したエミリア、熱狂にヒットラーを信奉する兵士のアルフレッド、彼らの運命は戦争に翻弄される。作者はリトアニアからの亡命者を父に持つアメリカ人で、父の従妹はこの船に乗っていたという。訳者あとがきにあるように「歴史はくりかえし、『今』につながっている」。